お会いするため、宮崎県の日之影町にも足をはこんできました。
そこは、自然に恵まれた山あいの小さな集落です。
この地に移り住み、伝統的な竹細工を継承しようとしている
小川さんのお話をぜひ聞いてみたいと思ったのでした。
真竹をつかった竹細工が盛んだったこの地域では、
「かるい」とよばれる背負いかごや、川魚を捕える「てご」、「うなぎぽっぽ」といった、
ここでの暮らしに根ざした、さまざまな道具が作られてきました。
名手のおひとりに、現在は90歳をこえ現役を引退されている
廣島一夫さんという方がおられます。
その作品は、1990年代初頭、アメリカの学芸員の来訪をきっかけに、
海外で高い評価を得、スミソニアン協会の美術館をはじめ、
米英各地で巡回展が開かれるほどでした。
日之影を代表する竹細工 「かるい」 |
小川さんは、この町のもう一人の名人、飯干五男さんに弟子入りしたのち、
日之影町の伝統を受けつぐ職人として、精力的にかご作りをつづけておられます。
たくさんの竹かごを生み出してきた、 飯干五男さんの手 |
訪問した日、町の高台からは、棚田やお茶畑、たわわに実るみかんの
木々が見渡せ、のどかな冬の午後の美しい景色に遭遇しました。
小川さんのお話を伺ううち、この里山の風景は、自然と人との交わりが
あったからこそ生まれた、、、というその意味が、分かってきたような気がしました。
長い年月をかけて急峻な山間部を切り開き、手塩にかけて暮らしを
作り上げてきた、土地の人びとの苦労。そして工夫。
日之影のすばらしい竹細工も、その賜物にちがいありません。
今日は少し冷えますね、といいながらストーブに薪をくべてくれた
小川さん。未来を見据えるまっすぐなまなざしが印象的でした。